2016/6/26経済・ビジネス
日銀の国債保有残高が全体の3分の1! リスクは何もないの?
今朝の日本経済新聞にて、日本銀行が保有する国債が、日本政府による国債発行残高の3分の1を超えたという記事が掲載されました。発行残高の約1000兆円のうち、日本銀行は約360兆円保有しているそうです。
日本経済新聞の論調によると、日本銀行の大規模な金融緩和政策によって大量の国債を市場から買い取る政策が進められているため、現時点で全体の3分の1を日銀が保有する事態に至ったと述べ、これ以上買い進めれば国債市場の需給が逼迫して、国債市場のボラティリティが高くなるとの見解を述べています。
果たして本当に日本銀行による国債買い入れ政策は
リスク
の大きい政策なのか、考えてみたいと思います。
日本銀行の大規模な金融緩和政策の目的
日本銀行が実施している金融緩和政策は、国債を中央銀行が買い入れることによって、長期国債から短期国債までのすべての
金利
を押し下げることを直接的な目的としています。その結果として、
金利
水準を押し下げることによって、民間企業に対して金融機関から資金を借り入れて、国内の潜在需要に対して商品供給をするべく積極的な設備投資を促すことを目的としています。また、個人に対しては低い
金利
を利用して住宅購入や乗用車購入を促しています。
このように、個人消費や企業の設備投資を促すことによって
経済成長
を実現し、さらには企業の従業員の賃上げが実施されることも目指し、賃上げが実施されることによって、さらなる個人消費の増加を呼びこんでデフレ脱却を目指すということが、大規模な金融緩和政策の本質的な目的なのです。
日本銀行による大規模な金融緩和政策の効果
2013年4月に、日本銀行は大規模な金融緩和政策を決定し、年間80兆円規模の国債買い入れを決定して以降、株式市場や地価が大幅に上昇したため、
資産
価格上昇効果により富裕層が個人消費を増やしました。このため民間企業の業績が向上し、翌年の2014年3月期決算ではほとんどの企業が増収増益を計上し、大企業では社員の賃上げに踏み切りました。
ところが、2014年4月に政府が消費税の3%増税を実施したことにより、一気に個人消費が冷え込んでしまいました。政府の統計によりますと、2014年4月以降、個人消費の伸び率は0%台で推移し、一時期はマイナスの伸び率となってしまいました。
つまり、日本銀行が投資や消費を促す
金融政策
を打ち出した1年後に、政府が個人消費を弱体化させる政策を打ち出してしまったわけです。
その後、日本銀行が淡々と国債を買い入れて
金利
水準を大幅に低下させ、2016年1月にはマイナス
金利
の導入さえ決定しましたが、それでも企業の設備投資意欲は冷え込み、個人消費の伸び率も低迷したままとなっています。
現状では、大規模な金融緩和政策の効果は表れていません。
日本銀行は、今後も国債買い入れを継続すべきなのか
日本銀行が
金融政策
を決定する際の判断基準は、日本経済がどのような状況に置かれているかです。国債市場の需給が逼迫しているといった要素は、
金融政策
の判断基準とはならないと考えられます。
日本銀行にとって、第一の問題点は、未だ個人消費が伸びないことだと思います。その結果、物価上昇率も0%近辺をさまよっており、このままでは再度のデフレ転落も覚悟する必要があります。このため、少なくとも現状の
金融政策
を取りやめることは非現実的であり、継続していくことが求められるでしょう。
また、国債市場の需給が逼迫しているため、国債価格が
乱高下
する
リスク
があるとの識者の意見については、そのような心配はないと思われます。なぜなら、このまま日銀の
金融政策
が継続すれば、いずれ日本国債の大半を日本銀行が買い入れることになると予測できます。
仮に、国債市場の需給が逼迫していることで国債の所有者がマーケットで
投げ
売りしても、すぐに日本銀行が買い入れるでしょう。ですから、国債価格の
暴落
は考えにくいと思われます。