2016/8/7経済・ビジネス
リオでオリンピックが開催されてるけど、経済的にはメリットがあるの?
・リオオリンピックの経済効果は、他の要因によって打ち消されてしまっている。
・オリンピック開催決定から3年間でGDPは10%成長し、オリンピック終了後はGDP成長率は0%~1%の間で数年間推移している。
・経済規模の小さな国にとっては、投資面でオリンピックは魅力的。
リオオリンピックの経済効果について
8月6日にブラジルのリオデジャネイロで夏季オリンピックの開会式が行われました。約2週間にわたり、各競技で熱戦が繰り広げられると思います。さて、ブラジルがリオデジャネイロにオリンピックを誘致した理由として、ブラジルが首都をリオデジャネイロからブラジリアへ移転したあと、リオデジャネイロの社会インフラが劣化し、経済環境も停滞気味であったため、リオデジャネイロに活気を取り戻すことが目的だったことが挙げられます。そして誘致が決定したあとは、オリンピック競技や選手村の建設、地下鉄の建設など財政出動を実施しました。しかし、残念ながらブラジルの場合は、オリンピック誘致によって経済効果を得られるはずが、他の要因によって打ち消されてしまっているのが現状です。ひとつは、資源価格の大幅な下落が挙げられます。ブラジルは資源大国であるため、鉄鉱石やアルミニウムについては世界でトップクラスの輸出量を誇っています。これらの資源価格が下落しているため、資源関連企業の業績が悪化しています。資源価格の下落の用意は、主な需要先である中国の経済情勢の悪化です。中国経済の悪化が原因で、ブラジルの貿易量も減少傾向にあります。ふたつめは、ルセフ大統領に対する支持率が大幅に低下し、ブラジルの政局は混乱状態にあることです。政局不安要因と経済の低迷によって、ブラジルの 通貨 レアルは大幅に下落し、その結果、輸入物価が上昇してインフレ状態にあります。ブラジルの中央銀行は、政策 金利 を10%以上の高い水準に引き上げていますが、依然としてインフレが収まらない状態となっています。最後に、ジカ熱の発生と、リオデジャネイロの治安の悪さが要因となって、ブラジルへの観光客が増えない状況となっています。リオデジャネイロの街に活気は見られません。以上の要素に基づき、ブラジルのGDP成長率は、2010年の7%程度から2015年には0%近辺まで大きく下落してしまいました。
過去のオリンピック開催国における経済効果と、その後の状況
過去のオリンピック開催の事例によると、オリンピック開催が決定した年から約3年間において、高いGDP成長率が顕現化すると云われています。つまり、GDP成長率のピークは、オリンピック開催の2年前となります。日本銀行の調査結果によると、3年間の累積で、GDPが10%押し上げられているようです。GDPが成長する要因としては3つ挙げられます。ひとつは、、オリンピック関連の建設工事が、オリンピック開催時期を目途として発注されることです。ふたつめは、オリンピック開催が決定したあと、開催国に対する全世界からの認知度が高まるため、観光客が増加するという経済効果も挙げられます。そして最後に、オリンピック開催決定によって、開催国の政府は対外開放政策を打ち出す傾向にあるという点です。このため開催国の貿易額が増加する傾向があります。なお、オリンピックの開催が終了したあとは、GDPの成長率は0%から1%の間で平均的に推移しているようです。もちろんオリンピック関連の建設投資は落ち込みますが、観光客の消費などの要因が 固定資産 投資の減少を相殺しているようです。
投資としては、オリンピックは魅力的なのか
経済の規模が小さい国にとっては、オリンピック開催は魅力的な投資なのだと思います。日本では1964年にも東京オリンピックが開催されましたが、このときの建設投資の乗数効果は絶大でした。経済学のケインズの乗数理論においては、経済規模が小さい国家であるほど乗数効果は高いそうです。ちなみに、1964年当時の日本では、乗数効果が5倍と云われていましたので、10兆円のオリンピック関連投資をすれば、GDPは50兆円増加したのです。しかし、現在のような経済大国である日本では、乗数効果は1.2倍と云われているようですので、10兆円オリンピック関連投資をしても、GDPは12兆円しか増加しません。このため、2020年の東京オリンピックが魅力的な否かは投資面では判断しがたいと思います。