2016/8/7経済・ビジネス
イングランド銀行が利下げ! どうして金利を下げたの?
・イギリスの景気後退入りを予見し、利下げに踏み切った
・イギリスに拠点を置いていた金融機関と製造業が、EU加盟国へ拠点を移す可能性が高い
・
金融政策
よりは財政出動の方が、効果的と思われる。
イングランド銀行が利下げに踏み切った理由
6月下旬に実施されたイギリス国民投票によって、イギリスによるEU離脱が決定しました。そして、キャメロン政権は退陣し、メイ内閣が発足しました。メイ首相も、EU離脱交渉を進めると明言しています。これを受けてイングランド銀行のカーニー総裁はイギリスの景気後退入りを予見し、7月14日に開催されたイングランド銀行の 金融政策 委員会において、カーニー総裁は次回の 金融政策 委員会では利下げを決定すると明言していました。そして、その発言どおりに、今回の8月4日の 金融政策 委員会で0.25%の利下げを実施し、政策 金利 を過去最低の0.25%とすることを決定したのでした。あわせて、国債などの 資産 購入枠を600億ポンド増額し、4350億ポンドとすることも決定しました。
EUを離脱すると、イギリス経済に対してどのような負の効果があるのか
EUに加盟していると、いくつかの経済的メリットがあります。まず、EU域内における貿易においては関税が課されません。イギリスの貿易の約50%がEU域内における貿易であったため、関税面でのメリットを大きく享受していました。しかし、今後イギリスに関税が課されるのであれば、イギリス国内に製造拠点を置いている企業は、他のEU加盟国に製造拠点を移す可能性が高いと思われます。また、EU域内の1国で金融機関が事業認可を得られれば、域内の他の国でもビジネスを展開できる制度があるため、これまでは多くの金融機関がイギリス国内に拠点を置いてビジネスを展開していました。このため、イギリスに拠点を置いている金融機関はEU加盟国へ拠点を移す可能性が高いと言われています。製造業と金融機関がイギリスから脱出してしまえば、失業率が上昇してしまいますし、
通貨
ポンドは下落してしまうと予想され、輸入物価が上昇すると予想されます。
今回の金融緩和政策は、本当に効果的なのか
イングランド銀行の目的は、利下げをして、さらに国債や社債の購入を増額することによって、イギリスの政策
金利
を引き下げて、民間需要の増大を促すことだと思います。一般的には、
金利
が下がれば企業は設備投資のためのお金を借りて設備投資や人材採用を実施し、個人は住宅や乗用車の購入のためにローンを組みます。しかし、今回の金融緩和を受けて、さらにポンド安が進行しました。そもそも多くの企業がイギリスから脱出することを懸念して、ポンド安が進行し、輸入物価が上昇しているため、これ以上ポンド安を進める政策を行うことは意味がないのではないかと思われます。企業がイギリスに残るのであれば輸出促進策として、ポンド安政策は意味があるとは思いますが、企業がイギリスから出ていく可能性が高いのですから、ポンド安政策は個人消費を冷やすだけではないかと思われます。むしろ、財政出動を実施し、公共事業を大増発するほうが景気対策として有効と思われます。