2016/8/11経済・ビジネス
アメリカでトランプ政権が発足したら、アメリカ経済はどうなるの?
・トランプとクリントンの支持率は、接戦となっているが僅差でトランプがリードしている
・過去の約20年間、アメリカの消費者物価は2009年を除き、一貫して上昇してきた
・トランプ政権が発足した場合、インフレ率が上昇する可能性が高い
現在のアメリカ大統領選挙の情勢
2016年7月に、共和党と民主党が、それぞれ党大会を開催し、共和党はトランプ氏を、民主党は ヒラリー ・クリントン氏を大統領候補者に正式に選出しました。アメリカ各社の最新の世論調査によれば、それぞれ2ポイントほどトランプ候補がクリントン候補を上回っている情勢ですが、依然としてどちらが優勢といえる状況とはなっていません。
過去約20年間のアメリカの消費者物価推移
過去の約20年間、アメリカの大統領職は、民主党のクリントン、共和党のブッシュ、民主党のオマバとそれぞれの大統領が2期8年在任してきました。その間、消費者物価はリーマンショックが発生した直後の2009年以外は一貫して上昇し続けています。ちなみに、クリントンが就任した1992年の
消費者物価指数
を「140」とすると、2016年の
消費者物価指数
は「240」となっています。消費者物価上昇率で見てみると、クリントン在任期間とブッシュの在任期間は、平均3%となっています。しかし、リーマンショックの発生直後に就任したオバマ在任期間中は、平均すると1%台に落ち込んでいます。なお、ヒッブスの党派的
景気循環
理論によると、民主党が政権を獲得すると高いインフレという犠牲を払ってでも完全雇用と経済拡大を目指し、共和党が政権を獲得すると失業率が高まるという犠牲を払ってでも物価の安定を目指すとされており、このため政権交代によって
景気循環
が発生すると理論提起されています。しかし、過去の約20年間の消費者物価の推移を検証すると、ヒッブスの党派的
景気循環
理論は的外れであることが指摘できると思います。
トランプ政権が発足した場合の物価動向の予測
共和党のトランプ候補は、低所得層対策に重点が置かれていると言われています。具体的には、大規模な財政出動を行い、橋や道路の補修工事などを実施し、低所得層の所得が潤うような経済政策を打ち出すと見られています。つまり、かつてルーズヴェルト大統領が実施したニューディール政策の再来です。理論的には、伝統的なケインズ政策の乗数理論を強力に打ち出し、例えば20兆円の国債を発行して、GDPを25兆円増やす政策です。財政出動をすれば低所得層の所得は増えますし、GDPが増えれば、当然、政府の税収は増えます。
現在、トランプ政権が発足した場合の、財政出動の規模は明らかにされていません。しかし、大規模に財政出動を実施すれば、アメリカ政府の財政に対する懸念が増幅し、大幅にドル安
円高
やドル安
ユーロ
高が進行することが予想され、アメリカ国内における輸入物価は上昇する可能性が高まると考えられます。このため、トランプ政権が発足した場合、消費者物価は大幅に上昇する可能性があることを指摘することができます