2016/8/16経済・ビジネス
損害保険会社が新たな保険を発売! どんな保険なの?
・損害保険各社が、主に電力小売自由化後に新規参入した事業者向けに、インバランス料金を補償する保険商品を開発した
・ほとんどの新規参入業者は自前の電源を持っておらず、電力の安定供給に不安があり、それが損害保険会社による電力安定供給費用保険の開発につながった
・画期的な保険としては、LGBTを対象とした
火災保険
や自動車保険が開発された
近損害保険会社各社が発売した電力安定供給費用保険の内容
損害保険ジャパン日本興亜が、8月9日から発電事業者と小売電気事業者向けに電力需給の過不足と調達費用を補償する「電力安定供給費用保険」を発売すると発表しました。これは、発電所の罹災や、計画ミスにより電気の需給が計画値を外れた場合、不足分や余剰分を市場で売買する必要が生じるため、その調達費用などを保険で補償することを保険内容としています。この保険商品が開発された背景としては、電力の小売が全面自由化されてから、発電事業者や小売事業者には30分単位で事前に定めた計画値に基づいて電気を供給することが法令で求められており、計画との乖離が生じた場合にはその差分をインバランス料金として送配電業者に支払う義務が発生します。この料金が発電コストの3倍になることもあることから、事業運営上の リスク となっているとのことです。そして、この保険によって、そのインバランス料金を補償することを目的としているようです。2016年4月には、東京海上日動 火災保険 も同様の保険をすでに発売しており、電力小売自由化後に新規参入した事業者向けに、保険の販売活動が活発化しそうです。
電力安定供給費用保険が開発された本質的な背景と、新規参入業者の現状
2016年4月に電力小売が全面自由化され、小口ユーザー向けで8兆円と言われる電力市場を狙って、100社を超える企業が新規参入しています。しかし、実際には新規参入業者はさまざまな制約に直面しているようです。ひとつは、独身世帯に営業攻勢をかけても採算があわないため、実際の市場争奪戦の主戦場は、電力使用量の多い大家族世帯や、高所得層に限定されるという点です。もうひとつは、ほとんどの新規参入業者が自前で電力の発電を行うわけではないという点です。新規参入業者が商品となる電力を確保する手段は限定されており、例えば中部電力や 東京電力 といった大手企業から電力の供給を受ける契約を結んだうえで顧客に販売するか、あるいは日本卸電力取引所が運営する国内唯一の電力卸市場で販売される余剰電力を購入するしか選択肢がありません。ちなみに、余剰電力が限られている要因は、原子力発電所の再稼働が遅れている点にあります。電力の安定供給に対する不安感が顧客側にあることから、すでに自由化されている大口需要家向けの電力市場では、自前の発電所を保有しない事業者の販売シェアは5%未満にとどまっているようです。このような電力調達の不安定な現状が、損害保険会社による電力安定供給費用保険の開発につながったのだと思われます。
これまでに生まれた画期的な保険
今年の8月、東京海上日動 火災保険 が同性婚のパートナーを配偶者として扱う 火災保険 や自動車保険を開発しました。これらの保険によって、火災や自動車事故に遭った場合、同性婚のパートナーも民法上の配偶者と同様な補償を受けることができるようです。いわゆるLGBTと呼ばれる人々を対象にした保険の開発は画期的だと思われます。 電通 の調査によると総人口の7%が、LGBTに該当するそうです。総人口の7%にのぼるとなると、まだまだ保険でカバーされていない領域が存在すると推測されますので、今後もLGBTを対象とした保険商品は開発されてくるものと予想されます。なお、保険の世界は、確率の世界ですので、確率論的に保険会社の利益となると判断されれば今後も多様な保険商品が販売されるものと思われます。