2016/8/16経済・ビジネス
電通がアメリカ企業を買収! 狙いは何なの?
・アメリカでの広告事業拡大だけでなく、マークルグループが持つサービス領域を生かして、日本国内でのインターネット広告事業を優位に展開していくことも今回の買収の目的
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電通
はグローバルネットワークの拡充を戦略目標に掲げており、着々とM&Aを実施している。そして、2017年度には
売上総利益
の55%を海外事業で稼ぐことを目標としている。
・インターネットとスマホの広告市場規模は、テレビ広告市場と拮抗する規模となっており、なおかつ広告手法が年々進化している。最先端のマーケティング技術を手に入れなければシェアを拡大することができない。
電通がマークルグループを買収した目的
8月9日、 電通 はアメリカの独立系で最大級のデータマーケティング会社であるマークルグループを買収することを発表しました。この買収における 電通 の目的は、広告手法の主流が、テレビCMからインターネット上のデータを活用して広告を効率的に配信する手法へと、大きな変化を示しているなか、世界最大の広告市場であるアメリカに拠点を持つマークルグループを買収することによって広告事業を拡大することと思われます。そして、マークルグループのサービス領域は、クラウドを活用したデータやCRM管理、分析、最適なチャネルやメディア、プラットフォームのなど多岐にわたっており、これを日本国内でのインターネット広告事業の強化へ生かすことも目的としていると思われます。
電通の海外進出戦略
電通 は、中期経営計画でグローバルネットワークの基盤拡充を掲げています。2013年3月にはイギリスのイージス・グループを買収し、ロンドンに 電通 の海外事業を統括する 電通 イージス・ネットワーク社を立ち上げました。2013年4月から2015年12月までの海外におけるM&Aの実績は、投資件数が76件にのぼります。なお、M&A案件のうち43%はデジタル広告関係の案件となっています。これらを背景に、 売上総利益 ベースでの2012年度海外事業比率は15%でしたが、2015年度には54%にまで拡大しています。また、海外に展開している国の数は、2012年度は10か国程度でしたが、2015年度には75か国程度にまで増加しています。 電通 は、今後の経営目標のうち海外戦略としては、2017年12月期決算における 売上総利益 での海外事業構成比55%以上を掲げていますが、一方では為替変動の影響を大きく受ける収益構造へ変貌していくことを意味しています。
電通がターゲットにしているデジタルマーケティング業界とは
現在の広告市場は、長年圧倒的シェアを誇ってきたテレビCM市場が2兆円を割り込んで減少傾向を示す一方、インターネットメディアでの広告市場は2014年にはついに1兆円を超えて、いまなお拡大し続けています。また、2015年のスマートフォン広告市場規模は約3700億円となっており、いまやインターネット広告市場とスマホ広告市場を合計すれば、テレビ広告市場と拮抗する規模となっています。そのインターネットやスマホ上での広告手法も年々変貌を遂げており、現在では、単にやみくもに映像や動画をページに貼りつける手法は時代遅れとなっています。現在ではターゲティング広告やDSPが登場したことによって、高度な広告配信が可能となっています。ターゲティング広告とは、インターネットユーザーが閲覧しているホームページなどを分析して、そのユーザーの嗜好にマッチした広告を表示する手法です。そしてDSPとは、広告主が費用対効果を最大限引き出したい場合に用いられる、広告枠の最適自動入札システムです。また、最近はマーケティングオートメーションツールというものも利用されるようになり、広告メニューを通じて顧客体験を追及する取り組みも始まっているようです。つまり、インターネット広告業界やスマホ広告業界では、高度なマーケティング技術を持たなければビジネスが成り立たない世界と言われており、大小さまざまな企業がしのぎを削っています。 電通 の2016年1月から3月までの第一四半期決算では収益構造におけるデジタル領域の構成比は約30%に留まっており、マークルグループを買収したことにより、デジタル領域での業績拡大の余地はかなり大きいと思われます。