2016/8/27経済・ビジネス
IMFが中国に勧告! 何度も警告や勧告を受けてるけど、何が問題?
・中国政府がGDP成長率について高い目標を毎年掲げているため、質の低い景気刺激策が中国国内で実施されていることを、IMFは問題点として指摘している
・IMFは中国に対して、国有企業向けの補助金削減や、過剰債務を抱えたゾンビ企業の淘汰を求めている
・IMFは中国に対して早急に過剰債務問題を処理するよう求めているが、民間が債務縮小に動くときは中央政府は財政再建に動かないほうが良い。民間と政府の両方が債務縮小に動けば、デフレ経済に突入してしまう。
IMFが中国に対して、GDP成長率の目標設定をやめるべきと勧告
8月12日に、IMFは中国経済に関する年次審査報告書を発表しました。その内容は、中国政府は景気刺激策の質を高めるためには、国内総生産(GDP)成長率の目標設定をやめるべきというものでした。IMFは、この年次審査報告書のなかで、中国はこれまでGDP成長率の目標を設定してきたことによって、短期的な視点でなおかつ質の低い景気刺激策が重視されるという望ましくない状況を醸成してきたと指摘しました。そして、目標を設定する場合でも、成長率のレンジ幅を広げたり、持続可能な数値を設定するなど柔軟な政策の運営を行うべきと勧告しています。この勧告の背景には、中国中央政府によって掲げられた高い目標を達成するために、地方政府や国営企業が無理に債務を増やし、その資金で生産性の低い無駄な公共投資や過剰生産を実施していることが挙げられると思います。この結果、地方政府や国営企業の抱える債務は過剰ともいえる水準に達しており、中国経済がかつてのバブル崩壊後の日本のようなバランスシート不況に陥ることを、IMFが懸念していることが推測されます。また、中国経済がバランスシート不況に陥れば、世界経済に悪影響を及ぼすことを懸念しているのだと思います。
IMFによる中国国内のゾンビ企業の淘汰に関する勧告
中国経済に関する年次審査報告書のなかでは、中国企業が抱えている過剰債務問題に早急に取り組むよう促しています。そして、国有企業向けの補助金の削減や、過剰債務を抱えたゾンビ企業の淘汰を求めています。IMFがゾンビ企業の淘汰を求めている理由としては、IMFの推計で中国企業(金融を除く)の債務が、2015年末の時点でGDPの144%に達している点にあります。これは、バブル期の日本企業が抱えていた債務に匹敵する水準となっています。バブル期の日本企業が抱えていた債務の規模は、GDPの150%程度に達していました。IMFとしては、中国経済が、バブル崩壊後の日本経済と同様の状況に陥らないよう勧告を発しているのだと思われます。
IMFはどのような改革を中国に求めているのか
IMFは具体的には、国有企業向けの補助金支出について制限を強めることを求めています。また、過剰債務企業を選別して、企業再編や業界再編を進めることも求めています。そして、これらの処理の方法として、政府を含む利害関係者の間で損失を確定して分担することを求めています。なお、さっそく数社の国有企業で改革を試行するよう促しています。さらには、改革を実施すると企業倒産といった痛みを伴うため、失業者への補償措置や民間企業の参入後押しも並行して進めたほうが良いなどと、踏み込んだ勧告をおこなっています。IMFが中国に求めている改革の内容は「ハードランディング」路線であると思われます。しかし、日本の 不良債権 処理のプロセスにおいて、2001年に発足した小泉内閣でも当初ハードランディング路線が取られましたが、結果的には日本経済は縮小均衡に向かってしまいました。そして、ハードランディング路線が誤りであることに気がつき、2003年にりそな銀行へ公的資金を投入したことを契機に、やっと日本経済は 不良債権 問題から抜け出すことができたという事実は見逃せません。かつての日本や現在の中国が抱える過剰債務問題を解決するプロセスにおいて注意すべき点は、企業が債務の最小化に向かうときに、政府までもが財政再建に向かってしまうと深刻なデフレ経済に突入してしまうことです。この参考事例として、バブル崩壊後の日本が挙げられます。