2016/8/27経済・ビジネス
ソフトバンクの孫社長が再び大型買収を決断! 携帯電話事業から転換するの?
・孫社長はIoT分野における収益拡大を見通して、ARM社の買収を決断
・
ソフトバンク
のM&Aには一貫性はないが、投資収益面では高い先見性があった
・
ソフトバンク
の経営状態に不安はない
ソフトバンクがARMを3兆3000億円で買収することを決断
2016年7月に、
ソフトバンク
がイギリスの半導体設計の大手企業であるアーム・ホールディングス(ARM)を3兆3000億円で買収することを決断しました。
ソフトバンク
の孫社長によると、ARM社は半導体の開発に不可欠な回路設計図のライセンス提供を主力ビジネスとしており、携帯電話やスマートフォン向けでは90%のシェアを誇っている他社の追随を許さない存在であり、今後、IoT分野の発展に伴いARM社の業績は急拡大していくことが予想されるため、買収を決断したと説明しています。また、ARM社を手中に収めることにより、今後のIoT分野におけるヘゲモニーを握ることになるとも語っています。
これまでソフトバンクが実行してきたM&Aの推移
ソフトバンク
の創業事業は、コンピュータ用のパッケージソフト流通業と、パソコン関連の出版業でした。この2つのビジネスを成功させて、1994年に株式店頭公開を果たしています。
ソフトバンク
にとって転機となったのは、同時期に野村證券から北尾吉孝氏をヘッドハンティングし、財務担当の役員に就けたことです。北尾氏は資金調達に辣腕を振るい、その集めた資金で、
ソフトバンク
は次々に有望企業へ出資をしていきます。例えば、アメリカの
ヤフー
に30%以上の出資を行い、日本には
子会社
として
ヤフー
ジャパンを設立しました。また、2000年には現在のあおぞら銀行にも出資しましたが2003年には全株を売却しています。それ以外にも、数多くのM&Aを実施し、成功した案件があれば失敗した案件もあります。転機となったのは、2005年に北尾氏が率いる金融部門が独立したことだと思います。これ以降、
ソフトバンク
は確固たる本業を持つことを決意したのではないかと推測しています。そのためにボーダーフォンを買収し、その後数年間は日本国内における携帯電話事業のみに専念していました。そして、日本国内の携帯電話事業が軌道に乗り、アメリカのスプリントを買収したのだと思います。
ソフトバンク
のM&Aには2種類の判断基準があると思われます。ひとつは、本業として収益の柱となるビジネスの獲得です。もうひとつは、そのときどきに時流に乗ってビジネスで利益を得られそうな事業への出資であり、投資面でも利益を得られるという計算に基づくものです。その観点では、携帯電話事業やARM社の買収は、基幹事業を獲得するための買収であり、
ヤフー
やアリババへの出資は、ビジネス面での収益以外に投資収益の拡大を狙ったものだと推測できると思います。
ソフトバンク
のM&Aには一貫性はありませんが、投資収益を得るという観点では、非常に先見性が高いと判断できると思います。
ソフトバンクは経営危機に陥るのか?
今回のARM社買収によって、
ソフトバンク
は
財務諸表
にのれん代を3兆円以上計上することになると言われています。しかし、スマホ関連でのシェアが90%であり、今後のIoT市場の急速な拡大を想定すれば、のれん代を
特別損失
として計上する
リスク
は低いのではないかと想定できると思います。また、今回のARM社買収のタイミングは、ポンド安
円高
あるいはドル安
円高
が進行している時点で決断したため、将来、為替差益を得られる可能性もあります。これは、アメリカのスプリント社についても同様です。スプリント社の買収を実行したときは1ドル80円台であったため、現在でも為替差益が発生しています。直近の
ソフトバンク
の決算説明会における説明によると、スプリント社の収益状況は改善傾向にあるようですので、当面の
ソフトバンク
グループにおける懸念
材料
はないと判断できると思います。投資先の株価も
堅調
であり、
ソフトバンク
の有利子負債と投資先への含み益がほぼ同じ金額であることから、経営危機に陥る心配はないと思われます。