2016/8/27経済・ビジネス
アイドルファンドとか映画ファンドなど面白いファンドがどんどん生まれているけど、どんな仕組みなの?
・ファンドが設立される理由としては、ビジネスの創業資金の調達手段として用いられているほかに、
株式会社
よりも税制面で優位性があることなどが挙げられる
・ファンドを設立するにあたっては、投資家やファンドにとって、税制面でもっとも有利なスキームを選択することが重要。また、監督官庁に届け出ることが必要となる
・ユニークなファンドとしては、「アイドルファンド」や「若手ガラス作家たちを応援するファンド」などが組成されている
なぜファンドの設立が相次いでいるのか
ファンドが設立される理由は、複数挙げられると思います。ひとつは、創業したいビジネスアイデアを持っていても、借入金の担保として差し入れられる
資産
を持たない人物は、銀行や信用金庫などの金融機関から資金調達ができない事例がほとんどです。このため、ファンドを設立して多くの投資家から資金を集めたうえで、創業したいビジネスに出資してもらうのです。政府は、ベンチャー企業が続々と誕生して、新たな技術革新や新たなサービスが創出されることを望んでいますが、金融機関の社内においては、いまだに担保主義が主流となっており、ビジネスモデルや創業者の情熱や力量を測ったうえで、無担保融資をすることはありません。ふたつめは、
株式会社
を設立するよりは、ファンドの方が税制面でメリットが大きいことがあります。
株式会社
の場合は、利益を出した場合は法人税等を納税したうえで、株主に
配当
を払います。しかし、株主も受け取った
配当
金のうち20%を国や自治体に納税しますので、結果的に2重課税となってしまいます。しかし、ファンドの場合は、ファンドに対して法人税等は課されませんので、2重課税となる心配がありません。もうひとつは、ファンドの場合は、投資の終了に伴うファンドの解散や清算が比較的に容易にできることが挙げられると思います。
株式会社
の場合は、簡単には清算や解散はできません
ファンドの作り方
ファンドは、多数の人から出資金を集めて投資や事業を行い、その投資や事業から発生した利益を投資家へ分配する仕組みとなっています。まずは、運用
資産
の内容や投資家層を考慮に入れて、どのようなスキームで運用するかを決める必要があります。ファンドや投資家にとって、税制面でもっとも有利なスキームを選択することが重要です。そして、ファンドを設立するときには、ファンドを運用する会社も同時に設立することが注意点となります。
運用会社
の設計と、ファンドのスキームに整合性を持たせる必要があるためです。次に、ファンドのスキームが確定したあとは、各種の契約書を作成していきます。利益の分配に関する方針や、
ファンドマネージャー
の報酬や、出資と払い戻しに関する事項などを契約書で取り決める必要があります。最後に、
運用会社
とファンドを設立したら、必要に応じて
金融庁
や財務局に届け出を行います。ファンドへの投資家の出資比率というのは、
金融商品取引法
上の有価証券と同じ位置づけとなっていることから、監督官庁への届け出が必要となるのです。また必要があれば法務局へ登記を行います。なお、ファンドの種類としては、投資事業有限責任組合(LPS)や
匿名組合
、
特定目的会社
、有限責任事業組合など多様となっています。例えば、LPSのメリットは、投資家が背負う
リスク
が出資額に限定される点にありますが、公認会計士による監査が必要となります。また、
匿名組合
のメリットは、投資家の匿名性が強く保護される点にあります。
近年、組成されたユニークなファンド
実際に組成されたユニークなファンドとしては、アイドルファンドが挙げられます。新人アイドルがDVDや写真集を製作する資金を集めるために、
匿名組合
方式で投資家から資金を集め、その資金を使ってアイドルファンドからDVDや写真集の製作業者に対して、製作業務を委託しました。また、ファンドの運営会社ミュージックセキュリティーズは、「音楽」や「農業」、「日本酒酒蔵」などさまざまな事業に投資するファンドを数多く立ち上げています。例えば、2011年には「若手ガラス作家たちを応援するファンド」が組成されました。これは、伝統文化を応援するための投資であり、工房で生産されたオリジナルガラスの売上の一部が出資者に分配されます。仮にファンドが元本割れを起こした場合は、黒壁ガラスという現物が分配されるそうです。他には、「純米酒と肴のこだわりのお店を支援するファンド」も2011年に組成されました。これはファンド名そのままの内容で、出資金は開店時の内装費用に充当され、お店の売上の一部が出資者に分配されたそうです。
2016年に入ってからは、寺社仏閣の宿泊施設である宿坊に投資するファンドも現れて、注目を集めています。