2016/8/27経済・ビジネス
お家騒動はなぜ発生するのか~お家騒動と株価まとめ
・2016年に入って、大戸屋ホールディングスで創業家と経営陣による対立が表面化し、8月に入って第三者委員会が設置され、和解に向けた動きが始まった
・2015年にお家騒動が発生した
大塚家具
では、勝利した社長側の経営方針を採用した結果、2016年度の業績は赤字決算に転落する見通し
・権力が
分散
している会社でお家騒動が発生しやすい。創業家よりも経営者の方が能力が高く人望が厚い場合や、形だけ創業者が経営権を後任社長に譲った場合や、創業家内部で株式保有者が複数存在する場合
現在、お家騒動が発生している企業
毎年のように、株式上場企業において創業家一族内での争いや、大株主である創業家と経営陣による争いが表面化して世間を賑わせる事案が発生します。現在、大株主である創業家と経営陣との間で争いが進行している事案として、大戸屋ホールデイングスの事案が挙げられます。これは、2015年7月に大戸屋の実質的な創業者であった三森久美氏が57歳で急逝し、2016年2月に三森氏の長男である智仁氏(27歳)が一身上の都合で 取締役 を辞任したことに端を発しています。その後、今年6月の 株主総会 において、会社側が 取締役 を3名留任、5名退任、8名新任とする人事案を提出し、創業家側がこの人事案に反対することを表明しました。この人事案の対立の背景には、現在社長を務める窪田健一氏がこれまでの創業者が打ち出した経営路線を否定するような経営判断を下してきたことに起因しているとも言われています。三森家は、大戸屋ホールディングスの約19%の株式を保有する筆頭株主ですが、 取締役 の選任議案は出席株主の過半数の賛成で可決成立するため、6月23日に開催された 株主総会 では会社側が提出した議案が可決成立しました。しかし、大戸屋の 株主総会 で議決権を行使した株主の割合が、全体の60%であったことを考慮すると、三森家は重要事項については拒否権を行使できるほどの株式を保有しています。そのことを踏まえたのかもしれませんが、8月9日、大戸屋は コンプライアンス 第三者委員会を設置することを公表しました。そして、創業家と経営陣との間の対立を解消することを目的として設置したことを明言しました。会社側としては、この第三者委員会の提言をとおして、創業家と経営陣の意思疎通を円滑にし、経営混乱に終止符を打つ意図なのだと思われます。
過去、お家騒動の発生によって業績が低迷した会社
過去にお家騒動が発生し、これをきっかけに業績が悪化した企業としては、2015年の 大塚家具 親子騒動が挙げられます。この事案は、創業者で会長職を務めていた父親と、社長職を務める長女が経営方針をめぐって対立し、社内が真っ二つに割れてしまい2015年に開催された 株主総会 では、父親と長女による委任状争奪戦にまで発展し、長女側が勝利しました。その後、創業者である父親が 大塚家具 を辞めて、自分を支持してくれた社員を引き連れて、2015年7月に新たな家具 販売会社 「匠大塚」を設立したことで決着しました。しかし、その後 大塚家具 の業績は暗転していきました。長女である大塚久美子社長の経営方針を前面に打ち出し、会員制販売を取りやめた結果、会社側が公表した2016年12月期の業績見通しは、 売上高 が前年比マイナス16%となる483億円となり、 経常利益 は37億円の赤字へ転落するとのことです。この発表を受けて 大塚家具 の株価は下落 トレンド に歯止めがかかりません。 大塚家具 の事案は、お家騒動によって勝利した側のビジネスモデルを採用した結果、業績が悪化した代表的事例と言えると思います。
お家騒動が発生しやすい企業の特徴
毎年のように、有名な企業でお家騒動が発生していますが、これには次のような特徴があると思います。
1.大株主である創業者一族よりも、創業者の後任の経営者の方が能力や人望があるケース
この場合は、
取締役会
でクーデターが発生し、大株主である創業者側が敗北します。創業一族が大株主ならば
株主総会
の役員選任議案で人事権を取り戻すことができると考えがちですが、経営者側は、第三者割当増資などを実行し、創業者の株式持ち分比率を希薄化してしまいます。そして、経営者側が文字通り新たな最高権力者となるのです。フジメディアホールディングスの日枝会長は、この事例の代表的な人物です。
2.有能な創業者が権力を手放さない場合
創業者は、会社を作って経営が軌道にのると、いったん後任に社長職を譲る傾向があります。会長職に退いて、自分の跡継ぎを作りたくなるようです。しかし、創業者が死ぬまで権力を手放そうとしない場合があります。とくに有能な人物ほど、死ぬまで経営権を手放そうとしないこともあります。そのため、後任の社長が独自路線を取り始めると、経営権を手放さないよう、最終的には大株主の立場から社長職を解任してしまうのです。
クックパッド
の佐野氏や、
ファーストリテイリング
の柳井社長は代表的人物です。
最後.権力バランスが不均衡となるとお家騒動が発生する
2015年の
大塚家具
や、
クックパッド
騒動でも、権力関係に不均衡が発生するとお家騒動が発生するのだと思います。創業者でありオーナーでもある人物が社長職として全権を掌握している会社では、お家騒動は発生しません。
資本と経営が分離していて、創業家側が中途半端に経営に関心を持っていたり、創業家内部で株式の保有者が複数存在すると権力バランスが不均衡となり、お家騒動が発生しやすいのだと思います。
大塚家具
では父親と娘の双方が大株主でした。
お家騒動を起こさない方法は、権力を常に一本化させておくことだと思います。創業者が保有する株式を
分散
させないことと、経営権は創業者あるいは後任の社長に一本化させることだと思います。そうすることによって、人心が乱れることはなくなるのだと思います。