2016/6/17経済・ビジネス
消費増税再延期の是非について考えてみた。
通常国会の会期末の日、安倍総理大臣は記者会見を行い、消費増税の再度の延期を表明しました。理由としては、予定通りに消費税率を10%にしてしまえば、個人消費が冷え込んでしまい、せっかくの日本経済の上昇基調が低落傾向に陥ることを防がなければならないためでした。この安倍総理の判断の是非について述べてみたいと思います。
消費税増税の再延期を決定した背景
日本の国内要因から説明すると、2014年に消費税率を8%に引き上げて以降、日本国内の個人消費が低迷したままであることを挙げています。2013年からアベノミクスがスタートして以来、株価や地価が上昇することによって個人消費が上昇傾向を示していましたが、2014年4月の消費増税が一気に消費者の心理を冷え込ませました。2014年4月以降は企業による賃上げも実施されていますが、それでも個人消費は冷え込んだままです。
現状のまま、予定通りに2017年に消費増税を実施すれば、さらに個人消費が冷え込んでしまい、計画通りに税収を増やすことができないと判断したのだと思います。むしろ、2017年に予定通り消費増税を実施すれば、2017年度の税収は横ばい、あるいは減収に陥る危険性があると判断したのだと思います。
消費税増税延期による、日本経済への影響
直近の四半期ベースの日本のGDP成長率は、0%台から1%台前半を行ったり来たりする低成長で推移しています。さらに4月に発生した熊本地震の影響で、自動車メーカーなどのサプライチェーンが寸断された結果、2016年4月から6月までの四半期GDPはマイナス成長となる可能性さえあります。
このため消費増税の延期は、日本経済がマイナス成長へ転落することを防いだ点では好影響があったと考えます。しかし、増税の時期を先延ばししただけでは個人消費が上昇基調に転じるとは思えませんので、日本のGDP成長率が上昇基調に転じるとは考えにくいです。
とはいえ、消費増税とは税収を増やすことが目的ですし、個人消費が財源となるのですから、10%への増税後も個人消費の金額を維持できる見通しがない以上、増税延期は日本経済に好影響をもたらす判断であったと思います。
どうやって福祉や子育ての財源を捻出するのか
消費増税の目的は、これからも増える高齢者のための福祉財源の捻出と、大規模な国債発行残高に対する償還財源であると考えられます。
しかし、日本は人口が長期間にわたって減少する見通しとなっていますので、常識的に考えれば、個人消費が増える状況ではありません。人口が減るのに個人消費が増えるとは考えにくいのです。このため、広く薄く国民全体から消費税を徴収するという手段だけが正当なのか再検討が必要と考えます。
例えば日本国民の
家計貯蓄
は1000兆円を大幅に超えます。この大規模な
家計貯蓄
から税として徴収するという選択肢も検討すべきでしょう。
ただし、富裕層に対して一気に
資産
課税すれば、富裕層は国外へ住民票を移してしまいます。このため緩やかな方法で大規模な
家計貯蓄
を、国庫へ移転させる方策を考えるべきですし、その方が、個人消費全般は横ばいに推移して日本経済もマイナス成長に転落することはないのではないかと思います。