2016/8/30経済・ビジネス
社員がいないロボットだけの工場! 完全自動化工場の背景には何があるの?
・長期的な人口減少により、今後製造業を中心に人材不足が懸念される。
・日本は低成長にも関わらず完全雇用を達成してしまっている。
・ロボットの進化によって、製造業は工場を海外移転する必要がなくなる。
日本国内における長期にわたる人口減少
日本国内では、すでに人口減少が始まっています。1年間に生まれる人間よりも、死んでいく人間の方が多い社会となっています。政府や有名なシンクタンクによると、この現象は、今後数十年間は継続すると推計されており、この要因だけでも製造業にとっては人員確保の面において懸念すべき要素となっています。
低成長にかかわらず完全雇用を達成してしまっている
2012年12月に第2次安倍政権が発足して以降、日本経済は、いわゆるアベノミクス政策により民主党政権時代のGDP500兆円割れからは脱却することができました。しかし、
経済成長率
はマイナス状態からは脱却できても、いまだに0%から1%の間で推移しており、低成長状態が続いています。
にもかかわらず、政府が発表する失業率と
有効求人倍率
から推測すると、日本は「完全雇用」を達成していると思われます。
日本経済が低成長のままでありながら、完全雇用を達成したということは、日本経済の実力を示す潜在成長力がかなり低い水準にまで低下してしまったということを示しているのではないかと推測できると思います。
ロボットが進化すればするほど、製造業は工場を海外へ移転させる必要がなくなる
製造業におけるビジネスの基本は、得意分野の技術に経営資源を集中し、世界へ向けて販売していくことだと思います。そのためには技術を磨くだけでなく、生産効率を高めて利益をあげていくために
損益分岐点
を下げていく必要もあります。
現状の日本においては完全雇用が達成されており、また、今後は人口減少が予測されますので、工場の生産プロセスの効率化が避けて通れません。そのために、キャノンをはじめとする企業では、人工知能を用いたロボットの導入に踏み切る経営判断をくだしたのだと思います。
しかし人工知能を持ったロボットを導入する理由は、当面の課題に対処することだけではないと思います。人工知能を持ったロボットを積極導入することによって生産コストを下げることができれば、今後は為替の変動に対応して、工場を海外に移転させる必要はなくなります。
ですから、製造業の企業はこれからも、日本国内に工場を建設することができ、新たに採用する人材は営業部門や企画部門に効率的に配置することが可能となると思うのです。
話をまとめますと、生産プロセスでロボットを全面導入するということは、製造業が工場を海外に移転させることがなくなり、そのことによって完全雇用の状態が継続化し、しかも工場の生産効率が高くなって企業収益が増加する可能性が高まるわけです。その結果、日本経済の潜在成長率を高めていく期待さえ持つことができるのだと思われます。