2016/9/7経済・ビジネス
企業の不正を暴いて大儲けするファンド!? 米国の空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループが日本市場に参入!
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空売り
ファンドグラウカス・リサーチ・グループの概要
・日本市場に参入したグラウカスが標的にした会社と指摘された不正内容について
・日本市場でのグラウカス以外の
空売り
ファンドの動向と今後の影響について
空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループとは?
グラウカス・リサーチ・グループは、本社がアメリカにあり、不正会計などで業績を不当によく見せている会社を調査し、その会社の上場株式や債券を
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することで知られるファンド会社です。これまでに自国はじめ香港やインドなどの22社に
空売り
を仕掛けています。近年目新しいところでは
東芝
の不正会計事件がありました。
グラウカス・リサーチ・グループはこのようなケースを調査していく方針で、今年7月から日本市場に参入を開始しました。このファンドの最大の特徴は、
空売り
ポジションの保有を明言し、調査リポートを公開し株価の下落を仕向け収益を得る方法を取っていることです。米国では
空売り
専門のファンドや調査会社がこのような手法を用い、収益を得ようとするケースがよくあるようです。一方で企業の決算操作を摘発するなど、市場では一定の役割を果たしています。
グラウカスは日本市場に参入しどんな企業を標的にしているのか
グラウカスは7月に参入後、大手商社の
伊藤忠商事
が過年度決算で利益の水増しをしている内容の調査レポートを公表しました。さらに目標株価を市場の半値が妥当とし、強く売り推奨しています。それもあってか、発表当日の伊藤忠の株価は
急落
、年初来
安値
をつけました。
気になる調査内容は、伊藤忠が主に3つの不正会計を行ったというものです。昨年コロンビアの石炭事業を持ち分法投資対象から外したこと、昨年度投資した中国の国営企業CITICには経営上の影響が及ばず連結決算に適さないこと、最後に昨々年度に600億円の再評価益を計上した、台湾の頂新ホールディングスの会計処理のタイミングに疑問を呈しており、これらにより損失の計上を回避したと指摘しました。
伊藤忠商事
側は上記に対し、当社見解と全く異なるものとして真っ向から反論しています。
グラウカス以外の空売りファンドの動向は?日本市場に影響はあるのか?
日本では最近グラウカス以外にも
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ファンド会社の動きがみられています。
空売り
専門のアメリカ調査会社のシトロン・リサーチは、日本の有望ベンチャー企業のひとつと思われている医療用ロボットの
サイバーダイン
について、競合の多さなどを理由に株価が割高だと指摘しました。
これに対して
サイバーダイン
はシトロンの分析は非常に浅いものであり事実誤認も含んでいると見解を表明、自社製品の独自性も合わせて説明しています。
ただし、
サイバーダイン
の決算は
売上高
より営業赤字が大きいという危うい経営状態です。実際のところは
サイバーダイン
の株式は大きな時価総額と流動性があるため、株調達のしやすさから
空売り
ファンドが目をつけたということのようです。
日本市場ではグラウカスやシトロンのように
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を仕掛け、レポート等で市場に揺さぶりをかけて収益を狙う
空売り
ファンドは今までほとんどありませんでした。
伊藤忠のケースはすぐに事態が収縮しましたが、
サイバーダイン
の場合、株価と経営実態に極めて大きな乖離が出ているようなケースでは、このようなファンドに莫大な収益を与えることになります。そして、その成功を見て海外の
空売り
ファンドが日本市場に乱入する可能性もあります。