2016/9/16経済・ビジネス
揺れる築地市場、地価はどうなる
・築地市場は昭和10年に開場し、今日、施設が老朽化するなどしたため豊洲への移転が決定されたが、土壌汚染対策工事に不備があったことが判明し、平成28年9月に豊洲への移転延期が決定された。
・築地市場の移転が公表されて以降、とくに築地4丁目の地価の上昇が際立っている。跡地利用計画による不動産の価値が高まることが織り込まれていると推測される
・築地市場の豊洲への移転が決定して以降、豊洲エリアの地価は景気変動の影響をあまり受けることなく上昇傾向が顕著となっている。
なぜ築地市場は、豊洲へ移転することになり、現状はどうなっているのか
築地市場は昭和10年に開場して以来、水産物に関しては世界最大級の取り扱い規模を誇ってきました。
築地市場が移転することになった理由としては、多くの施設が
耐用年数
を超えて老朽化し、すでに建物の一部が破損しており、部分的な改修工事では限界があることが挙げられます。また、場内が狭く、大型トラックでの搬入や搬出のスペースが不足していることや、混雑した狭い場内で荷物の積み下ろしが行われ、車両どうしの接触事故が起こりやすくなっていることも問題点となっています。
このような前提のもと、東京都では平成3年に築地市場での再整備に着手しましたが、工事期間の長期化や整備費が増大することなど多くの問題が発生したため、平成8年に再整備工事は中断されました。
そして、平成11年に東京都と水産業界との協議機関である築地市場再整備推進協議会にて、移転整備の方向性が打ち出され、平成13年12月に豊洲への移転が決定しました。平成18年には豊洲市場の施設の規模や配置などを取りまとめた基本設計計画について市場関係者との間で大筋合意がなされ、平成24年11月には豊洲市場の施設計画について合意がなされました。
一方、豊洲市場の建設予定地については、土壌汚染問題が指摘され、平成23年8月から土壌汚染対策工事が実施され、汚染された部分の土地を除去し、その上に盛り土を醸成する工事をし、平成26年11月の東京都技術会議において土壌汚染対策が完了したことを確認したことになっていました。
ところが、平成28年9月に入って、豊洲市場の施設の部分において盛り土の工事が施工されていなかったことが判明し、築地市場の豊洲への移転延期が決定されました。
築地移転が発表されて以降の、築地エリアの地価の推移と要因
平成13年に築地市場の移転が発表されて以降、国土交通省が毎年公表している地価公示によると、築地エリアの地価は平成17年までは下落傾向を示しています。例えば築地2丁目を見ると、平成13年には1平方メートルあたり155万円だった地価が、平成17年には123万円まで下落しています。そして、築地4丁目も同様に、平成13年には140万円だった地価が、平成17年には118万円にまで下落しています。この下落の要因は、築地移転も含まれている可能性はありますが、当時の日本経済は
不良債権
問題の最終処理段階にさしかかっていたため地価も下落
トレンド
となっていたと思われます。
そして、平成17年に地価は底を打ち、平成20年には築地2丁目の地価は191万円、そして平成21年には築地4丁目の地価は303万円まで上昇しています。この上昇の要因は、いわゆる「小泉改革
相場
」というものが不動産市場や株式市場を席巻した結果によるものと推測されます。
しかし、金融市場でリーマンショックが発生してからは、築地の地価も再び下落
トレンド
に入り、平成25年には築地2丁目の地価が135万円、築地4丁目の地価が228万円となっています。そして本年平成28年の地価公示では、築地2丁目が159万円、築地4丁目が266万円となっています。
このように長期的に振り返ると、築地4丁目の地価が上昇傾向にあることに気がつきます。この要因は、通常の
景気循環
の
トレンド
とは別に、築地市場の跡地利用として、環状2号線の開通などが計画されており、築地4丁目の不動産価値が上がることが見込まれていると推測されます。
豊洲への移転が発表されて以降の、豊洲エリアの地価の推移と要因
平成13年に築地市場が豊洲へ移転することが発表されて以降、豊洲エリアの地価は上昇傾向を示しています。国土交通省が毎年公表している地価公示によると、豊洲4丁目の1平方メートルあたりの地価は平成13年が61万円で、平成16年に57万円をつけるまではほぼ横ばいで推移していましたが、平成19年には77万円、平成20年には91万円をつけています。その後リーマンショックによる影響で地価が下落し、平成25年には79万円となりましたが、本年平成28年には87万円まで回復しています。
一方、隣接する東雲2丁目も緩やかですが地価が上昇しています。平成13年には28万円をつけており、約5年間は横ばいで推移していましたが、平成19年から上昇を開始し、平成28年には約38万円の
高値
をつけています。
公示地価の推移をみると、豊洲エリアの場合は、
不良債権
問題のときも、リーマンショックのときも大きな下落を見せることなく、長期的には地価が上昇
トレンド
を描いていることがわかります。この要因としては、築地市場が豊洲へ移転して、街が活気を得て、街の開発が進むことへの期待感が挙げられると思われます。
また、仮に豊洲への移転が全面白紙になるようなことがあっても、別の開発プロジェクトが計画されると予想されますので、大きな地価の下落は考えにくいと思われているのではないでしょうか。