2016/10/21経済・ビジネス
お金を出せば物価はあがるのか リフレ派と反リフレ派
・日本銀行は、2%の物価安定目標を実現するため、長期国債だけで年間80兆円にのぼる
資産
買い入れを行う金融緩和を実施し、なおかつ長期
金利
を0%程度、短期
金利
をマイナス0.1%程度とする
金利
操作も実施している。
・リフレ派の理論とは、目標とする物価上昇率を掲げて、
金融政策
を実施しマネタリーベースを拡大することによって実現するという考え方。代表的な論客は、岩田規久男氏。
・反リフレ派の理論とは、中央銀行の
金融政策
だけではデフレ脱却や安定的な2%程度の物価上昇率を実現させることは不可能であるとする考え方。代表的な論客は、リチャード・クー氏。
現在の日本銀行の政策
日本銀行は、2013年1月に2%の物価安定目標を掲げ、これを実現するために2013年4月に量的・質的金融緩和を導入しました。そして、2014年10月には
資産
買い入れ額の拡大による追加緩和を実施し、2016年1月にはマイナス
金利
の導入を決定しています。
資産
買い入れの対象は、国債のほかに、ETFやREITにまで及んでおり、長期国債だけで年間80兆円ペースで買い入れを進めています。
また、2016年9月には、それまでの
金融政策
の総括検証を行いました。その結果、長期
金利
を0%程度に操作し、短期
金利
をマイナス0.1%程度に操作するという、
金利
についての目標も設定しました。そして、物価上昇率が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大を継続するとしています。
なお、現在の日本銀行が採用している政策は、歴史的には非伝統的な
金融政策
と位置づけられています。
リフレ派の考え方とは何か
現在の日本銀行が採用している
金融政策
は、リフレ派の考え方に基づいているわけですが、その理論とは、一言で言えば「
金融政策
によって、デフレを脱却して年率2%程度の安定的な物価上昇率を実現させる」というものです。そのために、マネタリーベースを拡大させ、市場に流通するマネーの量を増大させ、それにともなって物価上昇率をデフレの状態から2%近辺まで上昇させることができるとする考え方です。
ちなみに、日本国内でのリフレ派の代表的な論客は、現在、日本銀行副総裁を務める岩田規久男氏と言われています。副総裁に就任する前、岩田氏は、デフレを脱却させるためには、日本銀行が目標とする物価上昇率を設定し、これを実現するために日銀が国債買い入れを実施することや、政府が規制緩和を実施することによって、有効需要を創出することが必要と主張していました。
反リフレ派の考え方とは何か
反リフレ派の考え方とは、中央銀行による
金融政策
ではデフレを脱却することはできず、安定的な物価上昇率2%は達成できないとする考え方です。あるいは、中央銀行が過度な金融緩和を実施することによって実体経済を過度に膨張させてしまい、いわゆるバブル経済の発生を誘発してしまうとする考え方です。
反リフレ派の代表的人物としては、
野村総合研究所
で主席研究員を務めるリチャード・クー氏を挙げることができます。リチャード・クー氏の主張は一貫しており、現在のデフレ現象の原因は約20年前のバブル崩壊によるバランスシート不況にあるとしています。バブル崩壊によって企業が積極的に資金の借り入れをしなくなり、積極的に設備投資をしなくなったことが、デフレを脱却できない要因であると述べています。
バブル崩壊後は企業が積極的に借り入れを増やさないため、中央銀行がいかに強力な
金融政策
を実施してもマネタリーベースは膨張するが、マネーサプライはほとんど増加しない状態であり、この結果、日本の物価は上昇しないと述べています。
リチャード・クー氏は、
金融政策
ではなく大規模な減税を実施したり、規制緩和を実施して有効需要を生み出す方が、デフレ脱却を実現することが可能であり、安定的な2%の物価上昇率を実現することができると主張しています。