2016/11/15経済・ビジネス
転換した先に何が見える?大転換から立ち直った企業、つぶれた企業
・クリスピー・クリーム・ドーナツが赤字経営に転落し、店舗数を最盛期よりも約3割減少させた。黒字転換をはかるために、ファミリー層が長い時間店内に滞在してもらえるような、店舗のレイアウトに変更する方針。
・ビジネスモデルの転換に成功した企業の代表格としては、松井証券。対面営業から、インターネット取引へビジネスモデルを全面転換して、業績を飛躍させた。
・ビジネスモデルの転換に失敗した企業としては、ダイエー。デフレ対応を誤り、商品の品質を落としてまで低価格路線を突き進み、顧客離れを引き起こした。その結果ライバル企業に買収され、2018年には店舗の屋号からもダイエーが消滅する計画となっている
赤字経営に陥った、クリスピードーナツ
クリスピー・クリーム・ドーナツの日本国内の店舗が、いま次々と閉店しています。原因は売上低下にともなう赤字決算への転落です。
クリスピー・クリーム・ドーナツは1937年にアメリカ南部で創業され、2000年代に入ってアメリカ全土で多店舗展開を進めてきました。そして、日本では2006年にロッテとリヴァンプの合弁会社として設立されました。2006年に東京の新宿にオープンした当初は熱狂的に消費者に迎えられ、あちこちの店舗で長い行列が生まれました。
2015年には日本国内での店舗数が64店舗にまで増えましたが、2015年3月期決算では約8億円の最終赤字を計上し、2016年9月末時点で店舗数が46店舗となり、一転して縮小均衡路線に転換しています。
クリスピー・クリーム・ドーナツの日本法人の岡本社長は、業績を黒字転換させるために「これまでの、行列のできるドーナツ屋から、地元に愛されるドーナツ屋に転換する時期がきている」と宣言しています。
これまでは、多くの顧客をさばくために、店内で並びやすく、なおかつドーナツなどの商品を早いスピードで渡せることを重視した店舗レイアウトやサービスを展開してきました。しかしこれからは、店舗内で、20代から40代のファミリー層が落ち着いて長い時間滞在してもらえるように、落ち着きのあるインテリアやキッズスペースを設置したりするとしています。そして、新たな店舗を2016年9月に千葉県佐倉市にオープンさせました。
ビジネスモデルの転換に成功した企業例
クリスピー・クリーム・ドーナツとは業態が違いますが、ビジネスモデルの大転換に成功して業績を大幅に飛躍させた企業の例として、インターネット証券の松井証券を挙げることができます。
松井証券は、もともと中堅規模の対面営業をしている証券会社でした。それが、オーナー社長の娘婿である松井道夫氏が1995年に会社を引き継ぐにあたって、「これからはインターネットの時代である」と判断し、これまでの支店を全廃し、顧客との対面営業も全廃し、インターネット取引に全面転換して大成功を収めています。
ビジネスモデルの転換に失敗した企業例
ビジネスモデルの転換に失敗し、事実上消滅した会社として総合スーパーのダイエーを挙げることができます。バブル期までは「良い品をどんどん安く」をスローガンに掲げて、消費者からも強い支持を受けてきました。
しかし、1998年に物価がデフレ状態となると、ダイエーはビジネスモデルを「さらなる低価格路線」に踏み込んでいきました。その結果、店舗で扱う食品をはじめとする商品の品質が、「良い品をどんどん安く」から「安かろう悪かろう」の状態となってしまい、顧客離れを引き起こしてしまいました。
これが原因で、
売上高
が低迷し、赤字決算が続き、長期にわたる業績低迷という泥沼に入り込んでしまいました。このため店舗の改装費用を捻出することさえできません。こうした要因で客離れに歯止めがかからず、2015年には長年のライバル企業であった
イオン
の完全
子会社
となり経営再建を目指すことになりました。しかし、
イオン
の方針では2018年までにダイエーの屋号も消滅する計画となっています。