2016/8/21経済・ビジネス
PCデポがネット炎上、株価はどうなるの?
・PCデポが技術サービスと称して、高齢者に対して高額の
サポート
サービスを販売していたことが明らかになった
・ネット騒動の発生後、PCデポの株価は騒動発生前の株価1450円から1000円割れまで下落した
・ネット騒動と株価の因果関係は、必ずしも明白ではないが、投資家は企業業績へのインパクトを基準にして株式売買の判断をくだしていると推測できる
PCデポ騒動とは?
個人投資家に人気のあるインターネット上のサイトとして、「市況かぶ全力2階建て」というサイトがあります。このサイトを運営している主体は明らかにされていませんが、主に個人投資家など一般人によるツイッターや、インターネット掲示板2ちゃんねるでの書き込みのなかから注目度が高い話題や書き込みを取り上げて、ひとつの文脈としてまとめています。8月15日に、市況かぶ全力2階建てが、ピーシーデポコーポレーション(PCデポ)に関する一般消費者のツイートを取り上げました。その内容は、80歳を過ぎた父親がPCデポに対して毎月1万5000円の
サポート
料金を支払っており、息子さんが
解約
に出向いたところ契約解除料金として10万円を支払ったというもので、証拠となるレシートの画像も添付されていました。もともと契約解除料金は20万円だったようですが、店員の裁量で半額の10万円で済んだそうです。また、別の人のツイートには、PCデポの店内のチラシには、
サポート
付きパソコン商品の注意事項として「途中
解約
はできない」と記載されている画像が添付されていました。この2つの内容だけでも、PCデポは高齢者に対して悪質な商法を展開しているという認識がインターネット上で広がることとなりました。しかし、これに対するPCデポの対応には、一般消費者や個人投資家の失望感を招くことになります。
8月15日あるいは16日に、PCデポが公表したリリースでは「契約者とその家族には、理解と納得をしてもらえるよう働きかけをしていきたい。そして当社のサービスを十分に理解してもらえるよう改善策を検討していきたい」という木で鼻をくくるような内容でした。このリリースが、インターネット上では一般消費者や個人投資家の怒りに対して、火に油を注ぐ結果を招きました。市況かぶ全力2階建てでは、8月16日にもPCデポに関するまとめ記事第2弾を掲載し、一般消費者のツイートを引用する形で、PCデポが年額13000円のクラウドストレージに加入する形で外付けハードディスクを販売していることを暴露しました。このような商法は、一般社会通念では悪質商法です。インターネット上では、一般消費者の怒りはさらに膨らんでいきました。そして、8月17日付でPCデポは、主に次の内容を決定したことをニュースリリースで公表しました。
①顧客の使用状況にそぐわないサービス契約については契約解除を無償で対応する
②70歳以上の顧客が新規に加入する場合は、家族などの第三者の確認ももらう
③75歳以上の加入者に対しては、契約解除等については無償で対応する
とりあえず、PCデポのこの対応により、ネット上での騒動は沈静化すると思われますが、PCデポが消費者から信頼を取り戻すには時間がかかると予想されます。
PCデポの株価推移
市況かぶ全力2階建てに記事が掲載された8月15日、PCデポの株価は前営業日の 終値 1450円に対して、121 円安 い1329円で終わりました。そして、翌16日、翌々日の17日と続けて株価は下落し続けており、8月19日には一時1000円を割り込みました。この株価の下落要因は、PCデポの商法に対する批判というだけでなく、今回の騒動により、PCデポの最大の収益源であったソリューションサービスの 売上高 が大幅に減少するであろうと投資家が予見して、株を売却しているものと考えられると思います。2016年第一四半期決算の売上内訳をみても、パソコン本体や周辺機器などの売上合計が54億円であるのに対し、ソリューションサービスの売上は67億円となっています。悪質な商法を取りやめれば、業績に対しては大打撃を与えるものと予想されます。
過去のネット騒動で影響を受けた株と、その後の株価の動向
過去にも、ネット騒動は存在しました。2015年10月には、豆蔵ホールディングスの荻原社長が「東京オリンピックにおいては無償ボランティアで対応できるエンジニアが必要であり、オリンピックまでに4万人のエンジニアを育てなくてはいけない」と公の場で発言したことに対し、ツイッター上やインターネット掲示板などでは「なぜ、ボランティアで働かなくてはいけないのか」と、荻原社長を批判する騒ぎに発展しました。その後も荻原社長は、ボランティアでなくては駄目なのだと頑なな発言を繰り返しました。しかし、この騒動のとき豆蔵ホールディングスの株価は400円台でしたが、2016年7月には株価は1000円台まで上昇しています。他にもネット騒動はあります。2016年5月には電解水素水を販売している1部上場企業の日本トリムが騒動に巻き込まれました。ツイッター上やインターネット掲示板で「水素水は、ただの水だろう」という書き込みが相次ぎ、市況かぶ全力2階建てでも取り上げられたのです。このネット騒動が発生した5月には株価は7000円を付けており、2か月ほどは 高値 水準を維持していましたが、8月に入り株価は5200円台まで下落しています。ネット騒動と株価の因果関係は、必ずしも明白ではありません。しかし、明らかに業績にマイナスインパクトを与えると推測される事案の場合は、株価はただちに下落しています。今回のPCデポがその例です。また、ネット騒動とはなっても、豆蔵ホールディンスのように本業とは関係ない騒動であり、その後も増収増益基調が崩れていない場合は株価は上昇していきます。そして、ネット騒動と株価の因果関係が不明なのが、現在も増収増益基調の日本トリムのケースです。推測ですが、一般的な心象としては、たしかにいまは 売上高 と利益が伸びているが、水素水はいずれ飽きられるだろうし、実際飲んでみると水素水はただの水だと思う人がいると思います。そこで、日本トリムの株価は上昇しすぎたと投資家が考え、現在下落基調となっていると考えても不思議ではないと思われます。